一億総ジャッジメント・ディ(M-1グランプリ雑感)


毎年どこかしらでM-1グランプリのことを書くのが恒例になっていた私でございますが、今回は見事にお仕事の真っ最中。しかもリテイク。さらにこちら側のミス。そして翌日朝デッド。オーマイガ。

日曜日だと言うのに出勤しまして、クライアント(と言っても知り合いなので、和やかなんですけどね)さんと修正作業。その傍らで6時半になったのを確認し「ねえねえ、テレビつけていい? ワンセグだけど」「あ! M-1って今日ですよね。いいですよお」ということで、ワンセグから流れる荒い画像と音で今回もM-1、堪能致しました。

以下、カンタンな感想を。思いっきり時期を逸してますがー。

1:ダイアン(6位・619点)

「パナスティ」大好きですねえ。このダイアン独特の展開を聞けただけで満足です。でも、M-1では厳しいかも。独特の間が遅く感じるんですね。いやいや、十分面白いんですけども。なんかアレですね。笑い飯の後を継ぐのはダイアンなのではないか、という気がスッゴクしています。

2:笑い飯(4位・637点)

手数漫才、という表現がかなり浸透している(特にブログで)のに驚いたんですけど、今回の笑い飯のお二人は手数的にもかなりノれていたんじゃないかと思います。後半にダレてきちゃったような気はしますけど、それでも去年よりはかなりの健闘でしょう。
暫定ボックスから陥落したときの西田氏の言葉「思うてたのとちゃう!」は非常に良かった。あのアドリブは笑い飯の二人じゃないと出ないし、笑い飯が繰り出すからこそ大きな笑いになる。たぶん、もはやM-1に出続けることに意味があるんでしょうね。

敗者復活→ オードリー

納得の敗者復活でしょう。敗者復活を見ていないので当日のポテンシャルがどうだったかは知りませんでしたが、今年に出演したテレビ番組などでその実力は十分見せてましたから、当然でしょう、というのが正直な感想でした。で、実際の演目を改めて見て驚愕するわけですけども。
できれば以前から推してる「流れ星」に来て欲しかったんですが、彼らってムラっ毛がかなりあるんですよねえ…。

ていうかね、それよりもですよ! ラリーさんも指摘されていますけど、上戸彩の司会っぷりには驚きました…。敗者復活会場である大井競馬場から映像がスタジオに戻ってからの今田氏とのやり取り。

今田「というわけで、敗者復活はオードリーに決まりました!」
上戸「ウィ

ええええええええええええ! と椅子からずり落ちる僕。僕を凝視するクライアントさん(知り合い)。そ、そ、そこで「ウィ」を言える上戸彩って…。すごい…。
オードリーをよく知ってないと言えないアドリブである以上に、この場面でそのアドリブをさらっと繰り出してしまう上戸彩の底力…。末恐ろしいですね。その他にも明らかにお笑いが心底好きでないといえない言葉がぽんぽんと飛び出した彼女。マジで冠バラエティとかいけるんじゃないスか?

3:モンスターエンジン(7位・614点)

彼ら独自の世界を紹介できただけでもモンスターエンジンの決勝進出は意味があると思ってたので、正直デキとかにはあまり注目していませんでした。むしろ「無事に終わってくれよ…」と一人勝手に心配してたりとか。
まだまだ経験不足なのがきっちり出ちゃった感じですけど、彼らの真価はこの側面だけじゃないし、それは「あらびき団」や「レッドカーペット」がこれからも発信してくれるでしょう。

4:ナイツ(3位・640点)

早めに白状します。僕、実はナイツのお二人がやっているスタイルが苦手です。
でも、うまいなあ…と感嘆しました。ソツなくこなしてましたね。笑いはしないんだけども非常に練られている構成だったので、安心しながら拝見しておりました。3位にも納得。

5:U字工事(5位・623点)

たぶんこのお二人の漫才も僕はそりが合わないんでしょうね。そんなでもなかったかな、という印象でした。でも、経験豊富なだけあってお上手ですね。安定感もありましたし。

6:ザ・パンチ(9位・591点)

M-1ではこのスタイルは向かないだろうなあ、でも、嫌いじゃないんですよ。テンポが速くなって、突っ込みのキレが増せばもうちょっと戦えたのかもしれません。

7:NON STYLE(2位・644点)

人知れず大本命に上げていました。オンエアバトルも取って、東京に出てきて、さらにレッドカーペットではいい感じでの出演が続いていて…と、キングコングさえかわせればまずいけるだろう、と。イキリ漫才の頃から知ってるのもあるんでしょうね。
いやはや、鉄板でした。今のスタイルが非常に板についていて、さらにスピードや展開もブラッシュアップできているのが非常に心地よかったですね。前回のトータルテンボスみたいに「あと一歩及ばず」になったらキツイだろうなあ、なんて不安も覚えましたが、結果的には杞憂でした。

8:キングコング(8位・612点)

いやああああ…、どうしたんでしょう。彼ら一流のスピード感がまるで消えうせていました…。昨年あれだけのポテンシャルを引き出して「これはすげえ!」と再評価していたんですけど…。その時の良さが全て吹っ飛んじゃいましたね…。カウス師匠の批評もかなりツボをついてましたが、来年は出場、しないんだろうなあ…。

9:オードリー(1位・649点)

あれれれ!! オードリーってこんなにすごかったっけ?
驚きました。やっぱりレッドカーペットの1分じゃ真価はわからないもんですね。ここまで追い込んでいたとは思いも寄りませんでした。スピード・構成・間と文句なし。サンドウィッチマンが去年見せた、神がかり的な雰囲気を今年はオードリーがまとっています。スゲエ!

最終決戦

ナイツ(0票)

初回のネタと比べてブラッシュアップされている感じでした(ネタは初見)が、うーん、やはり自分には合わないですね…。でも、十二分にそのテクニックを堪能しました。M-1には向かないのかもしれないですけど、かつてのテツandトモのような位置にいければいいんじゃないのだろうか、と思いましたね。これでスピード感とかが出たらどうなるんだろう、とかも思ったりとか。

NON STYLE(5票)

イキイキとやってるのが非常によかったですねえ。ウネリも作れていましたし、お客さんをきっちりと味方につけていました。僕個人的にグッっときたのが、イキリを入れてきたこと。彼らが今のスタイルにチェンジしてからイキリを見ることはなかったので、虚を突かれました。「うぉ! NON STYLE本気だな」と感じた瞬間でした。祝、優勝! 俺の涙腺!

オードリー(2票)

こちらも面白かったですねえ。ネタは見たことのある「選挙演説」でしたけど、前に見たときから非常に練られていて、まさしく洗練されていました。すばらしい!
NON STYLEの前だったら優勝だったかもしれないですね。それだけ僕には上位2組が拮抗している風に写りました。スタイルのベクトルも違うし、これは甲乙つけがたいなあというのが正直なところ。でも、あの「イキリ」を見てしまうと、どうしてもNON STYLEに勝ってほしいと思わざるを得ませんでした。思い入れありすぎです。
次回、オードリーは間違いなく優勝候補筆頭でしょう。そんなスターが出てくるのがM-1のスゴイ所だし、大きな魅力なんでしょうね。

総括

毎回番組終了後に各所のブログを見て回るのが恒例行事になっています。今回はあけて翌日の夜にじっくりと見たんですが、まあいつものコトながら評価がわれまくってますね…。

例えば。

ナイツ。ここは完全に最終決戦で勝つつもりでネタを仕上げてきましたね。去年からあるSMAPネタもかなり改良されている。というか、もう1回冷静に見て みると、このナイツの2本目も相当面白いですね。仮に、去年このネタで最終決戦を戦っていたらサンド、トータル、キンコンを押さえて優勝も狙えたんじゃな いか、っていうくらい。ここまで完全に仕上がっている芸人が3位止まりなんだから、今年のM-1は本当にレベル高すぎます

-おわライター疾走 / M-1グランプリ2008決勝をもう1回じっくり見てみる3

簡単に言ってお笑い界の歴史が大きく変わる一日になったと思う、個々の芸人がとかではなく、来年のお笑い界ではなく、ここ十数年に渡って主流だったものを、大きく覆すことになると思う。

-昨日の風はどんなのだっけ? / M-1感想書きかけ(下書き公開版)

という、絶賛する声もあれば。

先々年まではたまたま「一番大衆受けした」=「一番面白かった」という幸福な図式がなりたっていた。しかしそれがどうにも去年から崩れてきている。あるいはM-1が変わってしまったのではなくて、もとから単なる「レコ大」だったのかもしれない。そして今やレコ大に在りし日の権威や夢はない。

-ロマンティックあげるよ。 / 「レコ大」化してしまった…

M-1グランプリ2008を観た。第8回だが、今までの中で一番レベルが低い大会になったと思う。

-おぎや32の日記 / M-1グランプリ2008

と、ケチョンケチョンにけなしているものまで、まさに玉石混交という感じでした。去年までもこういう傾向は強かったんですけど、今年は特にふり幅がヒドイ。大事なことなので2回言います。ふり幅が、ヒドイ

これまでは出場した芸人にスター性だとか、その場でいきなり発揮されたカリスマティックなものも左右していた部分ってあると思うんです。中川家、ますだおかだ、フットボールアワー、アンタッチャブル、ブラマヨ、チュートリアルとそんな匂いってあったと思うんですよね。ブラマヨはもう出てきたときにインパクトがすごかったですから。だから優勝したときにある程度の説得力があったんだと思うのですね。もちろんその上で批判する論調も毎年ありますし、一概には言えないと思うんですけど、優勝! って言われてストンと腑に落ちる感覚が、ある程度あったんじゃないかと思います。

で、そのあとサンドウィッチマン、NON STYLEと続くわけですけど、欠けている点とすればそこかもしれないです。サンドウィッチマンはブラマヨ以上にノーマークな存在でしたし(まあ、ビジュアルのインパクトはありましたが)、NON STYLEは逆にある程度の露出がありましたから、新鮮味がないと言えばそうかもしれない。それが腑に落ちない感覚と言えるものなのかもしれません。

ただ、今回僕が非常に強く感じたのは、「いやいや、レベルは高かったし、お客さんも大爆笑してたじゃん」ということと「審査員(特に予選~準決勝)が非常に順当にやっていたなあ」ということでした。
前回の反省を生かしたんでしょうか、決勝に残った8組はどれも納得のいくものでした。今他番組で注目されている人。その技巧の高さが評判の人。100%納得が行くか、というと難しいかもしれない(たとえばモンスターエンジンは意外な印象を持ったのも事実)けど、これまでに比べて「え? このコンビも出るの?」みたいな意外感はなかったんですよね。それが非常に清清しく写りました。

決勝の審査員の皆さんの発言も、そう騒ぐことではないような。
好き嫌いウンヌンという島田氏の発言だって、それは仕方ないっスよ、大変っすね…って感じに僕は受け取ったんですけどね…。そりゃあ最後は審査員の主観ですよ。100%客観で人間が審査できるなんてありえない(それこそ機械を使わなければ)し、そう批判している貴方がすべからく客観視できるのか、なんて売り言葉に買い言葉みたいな言葉を思わずにはいられませんでした。本当に客観視すべきだとするのであれば、それこそ今のフィギュアスケートみたいな審査方法にするしかないです。でもそれって、めちゃくちゃ味気ないですよね?

僕は思いました。12月21日、この日は皆が皆の主観で「ジャッジ」した日なのだなあ、と。

そんな中、4000組以上の人がM-1という舞台で汗と涙を流しながら戦っているわけです。

それを知っている人も知らない人も、みんな「ジャッジメント!」とSEをきっかけに、採点する日。それがM-1なのですね。

ああ、日本って、ホントに平和ですね…。…いやいや、皮肉でもなんでもなく。日本に生まれてホントによかったです。

だって、こうやっていろいろと言葉を交わせて、己の評価をしてくれる人たちが、たくさんいるんですもの。

最後に。オール巨人師匠のブログを紹介してこのエントリの締めとしましょう。特に決勝審査員を批判している方には、ぜひ読んで頂きたいブログです。

M-1・寸評・総評? / オール巨人の日記2006

http://nikki-2006.seesaa.net/article/111579540.html