ニコニコな話題を二つほど


以前取り上げました「らっぷびと」のデビューアルバムですが、なんと「人として軸がぶれているらっぷ」の収録が決まったようですね。しかも大槻ケンヂさんサイドの許諾を経た上で再録音したという、まさにハッピーエンドな展開。彼の代表曲が著作権の関係で埋もれてしまうのは誠に惜しい、と勝手ながら心配していましたが、この展開は予想の斜め上を行きました。いや、これはめでたい。

彼の発想力の高さとフロウテクニックの高さを存分に味わえる佳作です。まだな方はぜひご一聴を。

追記:ありゃ。キングレコードさんの要請で削除されちゃったみたいですね。映像使用が引っかかったのかな。

もう1曲。

らっぷびとと双璧をなす人気を獲得しているラッパー「タイツォン」氏とのコラボレーションです。原曲がZUN氏(IOSYS)というチョイスもさることながら、お二方の超絶なテクニックがここでも冴え渡っています。CDカットは原曲との兼ね合いから難しいかもしれませんが、これはもっとオーバーグラウンドなシーンで評価されるべきでしょう。掛け値なしにオススメです。

らっぷびとホームページ(仮)
http://rapbit.syncl.jp/

彼の公式サイトを紹介しておきます。
いま気づいたんですけど、らっぷびとがリリースするレコードレーベルって「EXIT TUNES」…、あああ! UTOくんとこじゃん!

UTOくんのことを話し出すと止まらないのでやめておきますが、頑張ってますねえ、UTOくんも。
よかったら、ぜひ。

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ニコニコ大会議2008、あれからいろいろ記事が出回りました。とりあえずこれをご紹介しましょう。

津田大介が語る「MADとニコニ・コモンズは裏腹」
http://ascii.jp/elem/000/000/149/149077/

わりと好意的な見方をしている見解例。ですが第三者的な観点を崩していないので、いい感じの記事だと思います。
まあ、これは開催のときから想像してたんですけど、やはり「肯定」と「否定」に議論がきっちり分かれてますね。別の言い方をすれば「楽観」と「悲観」。MADの行く末がこのニコニ・コモンズでどうなるか、というところでお話が真っ二つ、って感じです。

僕自身はいわば「デベロッパー/ライセンサー」の立場にいることもあって、ニコニコ動画のやり方はとっても好感的に受け取っています。映像団体との「手打ち」も必然的流れとして受け取っているし、ニコニ・コモンズや削除要請者の公開も非常に前向きに捉えているわけで、その意味で「悲観」的考えについては、気持ちはわかるんだけど、そこまで悲観しなくてもいいんじゃね? という考えに至ってしまうのですね。

MADはもともと「真っ黒」なものです。だからゆえにアンダーグラウンドなシーンで成長してきました。その中で数々の才能が埋めれているのを僕としては勝手ながら歯がゆく思っていて、それがニコニコによって表に出てきたことを素直に喜ぶ反面、「いずれ黒の部分をどうにかしなくてはならないはずだ。ドワンゴさんはどうするんだろう」という心配も少なからずしてきたんです。まあ、人事なんですけどね。

そういう観点からすれば、MADはもともアンダーグラウンドなんだから、それが表に出てくること自体厳しい、ふさわしくないってのもわかる。わかるんですよね。スターリンが、じゃがたらが、非常階段がアンダーグラウンドだからゆえに輝いたってことは肌身で感じてますし。それは否定しません。

でも、たぶん、たぶんですけど、アンダーグラウンドってのは表に出たとたんにものすごい力を発揮するんじゃないかな。全部が全部とは言わないけど、表に出てくることが幸せになるケースだってあるし、それが、硬直した集団や現状をリフレッシュさせることだってあるんじゃないか、とも思うんです。
電気グルーヴがいい例でしょう。彼らの「人生」時代は間違いなくアンダーグラウンドでした。でも、彼らは電気グルーヴとして世に出て、ドイツで石野卓球氏がテクノに目覚めて、そして世界的な知名度を勝ち得ていくなかで、自身とオーバーグラウンドとの距離感、みたいなものを見出したんだと思います。それが結果として日本におけるテクノ文化を掘り起こしたし、DTMの礎を創り上げたし、それまで限定的な理解に過ぎなかった「サンプリング」という概念を、ヒップホップアーティスト(特にスチャダラパー)と共に日本の音楽シーンに掲示したわけです。今じゃピエール瀧氏主演のドラマが民放でオンエアされる時代ですよ。一昔前じゃ考えられなかったことです。

僕は、そんな「現状を打破する力」をMADに見たし、ニコニコ動画に見ました。
そして、それにはある程度の説得力までおまけについてきたんです。企業運営、という形態です。
ひろゆきが表に出てきた時点で「また2ちゃんねるか」という偏見を持って切り捨ててしまいそうなところをかろうじて踏みとどまり、現在に至るまでヲチしつづけられたのは、ひとえに「ニワンゴ→ドワンゴ」が運営している、という事実があったことに他なりません。AVEX資本下にあるドワンゴが運営している、となれば、当然著作権に関するモヤモヤは考慮に入るわけで、それでも運営継続に踏み切り、ついには15分で18億円の資本投下まで決意した、ってんですから。そこに本気度を感じないほうがおかしいです。だからこそ、しがない一人の人間という立場からニコニコを僕は応援してきましたし、先日の「ニコニコ大会議」の内容に、僕は大満足しています。

これから、いろんなことがまた起こるでしょう。しばらくは「あのMADをなぜ消したし!」って当たりでいろいろもめそう。でも、いまそこで右往左往してもたぶん仕方ないんだと思います。
全ては「ニコニ・コモンズ」の全容と、参加デベロッパーの面子が明らかになってから。
そこで、僕は、僕なりにできることをしていこうと思います。
や、どこまでできるかわかりませんが。