語られることのない言葉1 →Worksに戻る


スペック:2001年9月4日更新、スナフキンの手紙に捧ぐ
背景:2ch閉鎖騒動(2001年8月)が過ぎて以降、いろんなカタルシスが頭の中で起きていた。そんな中で綴ったもの。インターネットというものに抱いていた幻想だったのかもしれない。でも、心の奥底では、まだ幻想を追いかけている自分がいる。この文を多数のサイトで取り上げて頂いた。多謝。


あんな強がりを吐いてしまった私。

実のところ、今も2ちゃんねるに書き込みをする気にはならないのだけれど、やっぱり今日もスレッドを追う毎日が続いている。

私自身、あれだけ書いておきながら、自分も始めは厨房だったじゃんよ…と一人突っ込みを入れている。だが、あの瞬間は本当にひどかった。ひどいなんてもんじゃない。私があの猛烈に書き込みが進むスレッドを見て、初めて恐怖を覚えたくらいだから。
でも、でも。


何をあきらめ切れないのだ?。
あの時、発言には決してそんなそぶりを見せずに苦悩するひろゆき氏の姿を、転送量のグラフを目にしながらため息をつく夜勤 ★氏の姿を、打ち合わせに明け暮れながら見えない光に手を差し伸べようとする切込隊長氏の姿を、この場を去ると決めながらもあくまで気丈に書き込みを続けるマァブ氏の姿を、お前は思い描いたのではないのか?。
そして、その苦悩を生んだのは他でもない、お前を含めた人間なのだということを知って、悲しみに暮れ、激しい怒りを覚えたのではないのか?。…ありすよ。



そうだとも。そうだともさ。
でも、でも、2ちゃんねるにはまだ望みがあるんじゃないかと思えてならないんだ。
あれだけの名スレッドを生み出したのも、数々の危機を乗り越えたのも、2ちゃんねるなんだから。

私が書き込みするかしないかなどということはとても小さいことだ。もちろん、数々の罵倒も、煽りも、ブラクラも、fusianasanも、とても小さいことだ。

だが、これだけの打撃をこうむった2ちゃんねるには、今でもたくさんの人で溢れかえっている。そして、今もたくさんの人が語ろうとしている。
もはやそれは、語られることのない言葉ではないのかもしれない。
でも、それを語る人にとっては、十分語られることのない言葉なのかもしれない。
そして、そんな言葉を唯一話せる場所が、まだ2ちゃんねるであったとするならば。





スナフキンの手紙を、心の奥底に持つ人たちに。

どうやら、転生後の2ちゃんねるに、初めて名スレッドが生れそうです。





宴のあと・・・。
http://teri.2ch.net/test/read.cgi?bbs=accuse&key=999090600



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15 名前:フレディ 投稿日:01/09/02 06:17 ID:MHhK76S6


『2ちゃんねらーのフレディ』

春が過ぎて、夏が来ました。

PCを買ってもらったフレディは、この春、大きな匿名掲示板のラウンジ板のなか、
初めてレスを書き込みました。
そして夏にはもう、荒らしも覚えた、りっぱな厨房に成長しました。
五つの捨てハンを自在に操り、力強くいきがっています。

フレディは、数え切れないほどの名無しさんに、とりまかれていました。
はじめフレディは、名無しさんはどれも同一人物だと思っていましたが、やがて、
ひとつとして、同じ名無しさんではないことに、気がづきました。スレ立てした
名無しさん、コピペ荒らしの名無しさん、すぐ上の名無しさんはネカマです。
みんな新学期に親にPCをねだっていっしょに2ちゃんに雪崩れてきました。
荒らしに誘われて、ゴルァゴルァ、煽ったりもしました。マジスレへの荒らしには、
じっとしているのがよいということも覚えました。お祭が起こるといっせいにレスを
付け合ってよろこびました。


フレディの親友は、ダニエルです。だれよりも議論好きで、昔からいるような顔を
しています。煽ることが好きで、怒らせ上手でした。ダニエルはフレディに、
いろいろ教えてくれました。フレディが2ちゃんの厨房だ、ということ。2ちゃんの
削除人は、ボランディアながらも、荒らしをあぼーんすることで、管理人とともに
頑張っていて、だから2ちゃんが訴えられないこと。荒らしやすいのは悲惨な1のいる
スレで、マターリ固定ハンがあいさつするのは雑談スレであること。荒らしや煽りや
騙りが、秩序なく、2ちゃんを巡回していること。そしてあめぞう以来の歴史のこと
など、みんなダニエルが教えてくれたことです。

フレディは「2ちゃんに参加できて、よかったな」と思うようになりました。
いつでも名無しさんがたくさんいるし、匿名で書き込めるし、ニュース速報は
玉石混合で、その上、親身になってくれるマジレスも申し分なく、モナーやギコ猫の
AAは微笑を誘い出してくれるからです。

夏になると、フレディは、ますますうれしくなりました。お日さまが昇るまでPCに
向かい、沈むのを待って眠れるので、テレホタイムにたくさん遊べます。そこら
じゅうを荒らしまくるのは、なんて気持ちがよいのでしょう。夜がふけるにつれ、
住民たちはますます熱くなって相手をしてくれるのですから、フレディは気持ちが
よくて、夢をみている気分です。


2ちゃんに、刺激を求めて、大ぜいの名無しさんがやってきました。
ダニエルは立ち上がり「さあ、知恵をしぼって、みんなで特定の板に襲撃を
かけよう」と呼びかけました。
フレディは、ダニエルに、たずねました。「どうして、そんなことをするの?」
するとダニエルは「退屈にうんざりしている名無したちに、楽しい遊び場を与えて
あげると、みんなよろこぶんだよ。」と言いました。ダニエルの言ったとおり
でした。ラウンジ板に、厨房や消防が、集まって来ました。ドキュソたちも
来ました。自慢のAAを披露する人もいます。フレディたちは、直リンを貼って、
楽しい襲撃スレッドを、教えてあげました。
「フレディ、これも厨房の遊びなんだよ。」
ダニエルの話を聞いて、フレディはますます嬉しくなりました。固定ハンたちは
トップに出ないでsage進行で、ひきこもりのつらさを話しているようです。
厨房たちは、コピペを貼ったり、名前を騙ったり、いたずらもするけれど、
嘲笑したり暴走したり、生き生きしています。

けれど、楽しい夏はかけ足で通り過ぎていきました。たちまち鯖に負担がかかり、
八月の終わりのある晩、とつぜん、2ちゃん閉鎖の噂がおそって来ました。
フレディも、多くの名無しさんも、荒らしも煽りも、ぶるぶるふるえました。
みんなの顔に、後悔の念が浮かびました。朝になると、UNIX板のおかげで、なんとか
持ち直しました。

「終わりがきたのだ。」とダニエルが言いました。
もうすぐ2ちゃんがなくなる前兆だそうです。


掲示板一覧のいくつもの板の表示が一気に白抜きあぼーんされました。
2ちゃんねるはまるごと蜂の巣をつついたような、騒がしさです。そこで、
ある名無しさんは苺ちゃんねるに、べつの名無しさんはメガBBSに、
ほかの名無しさんはス連の避難所、固定ハンはcocoa板の避難所へ、そして
フレディはダニエルと一緒に、ニュース速報板と批判要望板へ移りました。
なんてみごとな強制ID表示でしょう。

匿名性を大切にした、同じ板の、同じスレッドの、それも同じ名無しさんなのに、
どうしてちがうID表示をするのか、フレディにはふしぎでした。
「それはね──」とダニエルが言いました。「名前欄のクッキーは同じ名無しでも、
IPがちがえば、表示されるIDもちがう。ホストの名義もちがう。日にち、接続場所、
ダイアル回線、なにひとつ同じIDはないんだ。だから自作自演できないよう、みんな
ちがうIDを表示してしまうのさ。」

2ちゃんが変わったのは、そのあとでした。夏の間、笑いながら遊び場を提供して
くれていたひろゆき氏が、別人のように、ダンマリを決め込んで、名無しさんたちを
翻弄させているのです。名無しさんはこらえきれずにはじき出され、2ちゃんを
見切り、つぎつぎと散っていきました。

「ひどいよう」「ネタだよね?」名無しさんたちはおびえました。そこへ、
飛びがちなニュース速報板の中から、ダニエルのカキコが、とぎれとぎれに、
見つかりました。

「みんな、引っこしをする時がきたんだよ。とうとう閉鎖になるんだ。ぼくたちは、
ひとり残らず、2ちゃんからいなくなるんだ。」

フレディは悲しくなりました。ここはフレディにとって、居心地のよい夢のような
掲示板だったからです。
「ぼくもここからいなくなるの?」
「そうだよ。ぼくたちは2ちゃんねらーとして、厨房の遊びをぜんぶやった。
自作自演がばれて嘲笑をもらい、名無しや固定ハンのマジレスにはげまされて、
板のためにも鯖のためにも大量に転送量(料)がかかりすぎたのさ。だから、
引っこすのだよ。」ダニエルは答えました。
「ダニエル、きみも引っこすの?」とフレディはたずねました。
「ぼくも引っこすよ。」「それはいつ?」「ぼくのばんが来たらね。」
「ぼくはいやだ! ぼくはここにいるよ!」とフレディは、ageと入れて叫びました。


多くの固定ハンも名無しさんも荒らしも、そのとき、が来て、引っこして
いきました。見ていると一時閉鎖にさからって、「羊」にしがみつく
「モー娘。(狼)」もいるし、あっさりはなれる板住民もいます。
やがて2ちゃんは板をあぼーんしつづけ、裸どうぜんになりました。
残っているのは、ニュース速報板と批判要望板だけです。
「引っこしをするとか、ここからいなくなるとか、きみは書いていたけど
それは──」とフレディは胸がいっぱいになりました。
「2ちゃんねらーをやめる、ということでしょ?」
ダニエルはレスをつけてきません。
「ぼく、厨房をやめるのがこわいよ。」とフレディが書きました。
「そのとおりだね。」とダニエルが答えました。「まだ経験したことがないことは、
こわいと思うものだ。でも考えてごらん。ネットは変化しつづけているんだ。
変化しないものは、ひとつもないんだよ。トップ画像が書き換えられて
売る出される。名無しは任意IDから強制IDになり散る。変化するって自然な
ことなんだ。きみは2ちゃんねらーになるとき、こわかったかい? 厨房から
荒らしになるとき、こわくなかったろう? ぼくたちも変化しつづけているんだ。
2ちゃん閉鎖というのも、変わることの一つなのだよ。」

変化するって自然なことだと聞いて、フレディはすこし安心しました。
2ちゃんにはもう、ニュース速報板しか残っていません。
「この板も閉鎖なの?」
「いつかは閉鎖さ。でも“過去ログ”はGoogleで検索できるのだよ。」と
ダニエルは答えました。

最後の板が閉鎖し、2ちゃんも閉鎖する。そうなると、春に参加して夏の終わりに
はじき出されてしまうフレディの2ちゃんライフには、どういう意味があると
いうのでしょう。
「ねえ、ダニエル。ぼくは2ちゃんを知ってよかったのだろうか。」とフレディは
たずねました。ダニエルは禿げしく肯定しました。
「ぼくらは、春から夏の終わりまでの間、ほんとうによく荒らしたし、
よく煽ったよね。まわりにはドキュソや無職やひきこもりがいた。デムパや
犯罪者もいた。2ちゃんねらーでオフ会を開いたり、ニュース速報には素早く
情報をうぷしてマスコミの目を楽しませたりもしたよね。それはどんなに、
楽しかったことだろう。それはどんなに、幸せだったことだろう。」


その日の夕暮れ、最後の祭の中を、ダニエルは2ちゃんをはなれていきました。
「さようなら、フレディ。」
ダニエルはブラクラへの直リンを残して、ゆっくり、静かに、いなくなりました。

フレディの画面が、飛びました。

次のリロードはできませんでした。あぼーんです。やわらかでまっ白でしずかな
「File Not Found」画面が、じんと冷たく身にしみました。その日は一日中
どんよりした鬱だ氏のうなきもちでした。日は早く暮れました。フレディは自分が
色あせて枯れてきたように思いました。一筋の涙がほほをつたいます。
明け方フレディはもういちど「お気に入り」の2ちゃんねるにアクセスして
みました。蛍の光のBGMのなか、「2ちゃん閉鎖しました。。。」とひとこと
表示されるだけでした。
フレディは、ネットの中をしばらく泳いで、それからそっとPCを閉じました。

そのときはじめてフレディは、2ちゃんの全体の姿を感じました。なんて
荒唐無稽な情報に溢れた、素晴らしい掲示板だったのでしょう。これなら
いつまでも記憶にのこるにちがいありません。フレディはダニエルから聞いた
“過去ログ”のGoogle検索を思い出しました。“キャッシュ”というのは、
2ちゃんが閉じてからも読めるのだ、ということでした。

フレディがたどり着いた答えは自分の掲示板の立ち上げです。2ちゃんの
スレッド方式は、意外とすぐに真似できました。設立した掲示板は、
ID表示されない居心地のよいところにしたかったのです。フレディは満足し、
宣伝コピペを貼りまくりました。
フレディは知らなかったのですが──
秋が終わると冬休みになって、リアル厨房がどっと押し寄せ、
元2ちゃんねらーのフレディは、その厨房にまじり、名無しさんに溶け込んで、
掲示板の管理に右往左往することになるのです。

「2ちゃんねらー魂」は無意識のこころの中の、目には見えないところで、
新しい掲示板を生み出そうと、準備をしています。ひろゆき氏の意志をついで、
寸分の狂いもなく“2ちゃんねる”を変化・再生させつづけているのです。
かつて、あめぞうから、2ちゃんねるが生まれたように。。。

また、厨房の夏が、めぐってきました。

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「語られることのない言葉」
私たちが普段生活する中で、そして私たちが人々と触れ合う中で、決して交わされることのない言葉のこと。それは、苦悩の言葉でもあり、悔恨の言葉でもあり、告白の言葉でもあり、愛の言葉でもある。
私たちは、たくさんの語られることのない言葉を持っている。そして、その言葉たちは得てして語られることのないまま、人々の心の中で朽ちていく。
だが、人々は語られることのない言葉を、どこかで語りたがっている。そしてそれが、絶大なまでの力を持つことも、知っているのだ。

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